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2011年5月30日月曜日

第26回山川菊栄賞

●第26回山川菊栄賞授賞式報告
山川菊栄記念婦人問題研究奨励金の2006年度対象作品は、糠塚康江さんの『パリテの論理―男女共同参画の技法』(信山社、05年11月刊)に決まり、3月4日(日)都内で贈呈式が行われました。今年は男性の姿がめだちました。受賞者のゼミの学生さんと憲法研究者だったのですが、今回の受賞作品のもつ普遍性、影響力が感じられ、頼もしく思いました。
「パリテの論理」と言われても、多くの方には「何のこと」と思われるでしょう。フランス憲法院が「パリテ(男女同数制)はクォータ(割当)制の一種で女性に特別の権利を与えるものであるから、フランス共和国憲法が規定する男女の平等、個人=市民以外に権利の主体を認めない理念に違反する」としたために、逆に憲法に第3条5項「法律は選挙によって選出される議員職と公職への男女の均等なアクセスを促進する」、第4条2項「政党は、法律によって定められた条件で、第3条5項に表明された原則の実施に貢献する」という項目を入れ(99年)、2000年に「パリテ法」が制定されました。
糠塚さんは、「憲法学の立場から、フランスの共和主義における普遍的市民像を抽出し」、「パリテの論理を、精緻にかつ丹念に分析しながら」、「パリテとクォータの違いを論じています」(推薦の言葉より)。つまり「性差は生まれついたら変わらず、二つの区別はほぼ量的に等しく、女性はマイノリティではない。女性は常に男性とともにあり、女性だけで集団を形成しているわけではない」と明快に論破されているのです。スピーチを伺って、男女平等を主張するとき「使えるな」と思いましたから、これはきちんと読まねばと思っているところです。
受賞式の冒頭で、受賞者へ詫びながら、記念会代表の菅谷直子さんが06年12月17日に逝去されていた報告がありましたこと付け加えておきます。7月14日に偲ぶ会が計画されていますので、詳細が決まり次第報告します。


●山川菊栄賞推薦の言葉
推薦の言葉―浅倉むつ子
2006年度の山川菊栄記念婦人問題研究奨励金は、糠塚康江さんの『パリテの論理』に決定しました。私ども選考委員会が、数多くの候補の中から、もっとも優れた著作として本書を選んだ理由は、以下の通りです。
男女間格差を解消するための「積極的是正措置」であるアファーマティブ・アクションやポジティブ・アクションは、今や多くの国で実施されています。しかし、とりわけクォータ(割当)制については、男女平等原則に照らして、果たして合法なのか違法なのかという熾烈な議論が繰り広げられています。フランスではこの問題をめぐって、1982年に政治分野のクォータ制が違憲判決を受けながらも、99年には憲法改正を通じてその違憲性は克服され、さらに2000年には、性の偏在を克服するための技法として、「パリテ法」が制定されました。以来、フランスでは、さまざまなレベルの選挙を通じて、女性の議席が劇的に増加しています。
糠塚さんは、この著作において、ご専門の憲法学の立場から、フランスの共和主義における普遍的市民像を抽出し、特色のある男女平等原則に照らして、クォータ制が違憲判決を受けなければならなかった論拠を、見事に解明しています。そして1990年代に論壇に登場したパリテの論理を、精緻にかつ丹念に分析しながら、「パリテは50%クォータ制にすぎない」という見解を批判して、両者の違いを論じています。本書に一貫して流れている知的で深い洞察と誠実な研究への姿勢は、敬服に値します。
なぜフランスでは、いったんクォータ制が否定されながらも、憲法改正を行ったのか、そしてパリテ法を実現することができたのか。その論理とはどういうものなのか。私たちは、このような疑問に対する説得力のある回答を、糠塚さんの著作を通じて、初めて、得ることができるのです。このことは、日本で政治分野の男女共同参画を推進しようとしている私たちの実践にも、必ずや重要な手がかりを与えてくれるでしょう。その意味では、女性の権利に関心をもつすべての人にとって、本書は、必読の書といってよいのではないでしょうか。

http://www5f.biglobe.ne.jp/~rounou/yamakawakikue.htm

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