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2011年5月30日月曜日

第25回山川菊栄賞

●2005年度山川菊栄賞贈呈式報告
 山川菊栄記念婦人問題研究奨励金の2005年度対象作品は、森ます美さんの『日本の性差別賃金―同一価値労働同一賃金原則の可能性』(有斐閣、05年6月刊)に決まり、贈呈式が2月11日東京都内で行われた。
今回の受賞作となった『日本の性差別賃金』を森さん自身の記念スピーチから紹介すれば、「九〇年代に大企業女性労働者が始めた男女差別賃金裁判に触発され、彼女たちと一緒にペイ・エクイティ(同一価値労働同一賃金原則)研究を行う中で、九五-七年に商社・営業職における職務評価を実際にこころみ、その成果をまとめたもの」となる。
もう少し内容的に紹介すれば、日本の性差別賃金構造を、大企業の人事・賃金制度の視角から実に丹念に洗い出し、実証的に分析し、明らかにされている。その手法は、京ガス男女賃金差別裁判における<積算・検収>事務職と<ガス工事>監督職の職務比較にも活かされ、地裁での勝利判決となった(控訴審では勝利的和解)ことから、終章では「日本における同一価値労働同一賃金原則の可能性」を示唆されている。
 森ます美さんは、昭和女子大学人間社会学部教授として、労働とジェンダー、社会政策を講じておられるが、贈呈式には、学生さんは少なく、ペイ・エクイティの研究を共にすすめてきた商社の女性たち、男女賃金差別裁判を闘う女性たち、「均等待遇アクション」に関わる女性たちが、遠くは関西からも大勢かけつけていた。賞の選考委員である浅倉むつ子さんが「研究室に閉じこもるのではなく、企業の現場で働く女性たちの運動のただ中に身を置き、彼女たちによる性差別への怒りに共感しつつ、その権利主張に寄り添って、専門家としての理論構築をしている」と推薦の弁を述べられたが、まさにそれが実感できる参加者であった。
 贈呈式の後半は、京ガスの屋嘉比ふみ子さん、労働法学者としての浅倉さんを交えてのシンポジュームになり、日本において同一価値労働同一賃金原則を確立するための今後の課題が話し合われた。会場からの要望も含めて、「少し展望が見えてきた感じ」がした。  中村ひろ子(労働者運動資料室理事)


●推薦の言葉―浅倉むつ子
2005年度の山川菊栄記念婦人問題研究奨励金を、森ます美さんの『日本の性差別賃金』に贈呈できることは、私ども選考委員にとって、本当に嬉しく誇らしいことです。それはまさに本書が、当奨励金の趣旨にとってもっともふさわしい著作だからなのですが、その理由を二つだけ申し上げましょう。
 一つは、森ます美さんの研究への姿勢です。森さんは本書の中で、実に膨大な時間をかけて、多くの資料を丹念に読みこなし、統計を加工し、作図し、自分なりの結論を導き、自分の言葉で語っています。このような、本書を貫いている研究への限りなく誠実で粘り強い姿勢こそ、本書の信頼性をおおいに高めているものだといえるでしょう。
そしてもう一つは、森さんが、研究室に閉じこもるのではなく、企業の現場で働く女性たちの運動のただ中に身を置き、彼女たちによる性差別への怒りに共感しつつ、その権利主張に寄り添って、専門家としての理論構築をしているということです。このように運動との架橋をはかることによって、女性問題研究は、狭い空間に閉じこもりがちな学術の世界にいる人々にも、新たな風を吹き込む役割を果たしているのだと思います。
本書は、このような尊敬すべき森ます美さんによる初の単著です。そして、職種や職務の概念が希薄な日本では「実現不可能」とすら言われてきた「同一価値労働同一賃金原則」に正面から取り組んだ、初めての研究書です。
本書は、日本の男女の大きな賃金格差は、労働市場構造の特殊性や労働者の属性の差からのみ生まれるのではなく、個別企業の人事・賃金制度そのものからも生み出されているものだと主張しています。また、具体的な実践例を示すことによって、日本における同一価値労働同一賃金原則の適用可能性を提起しています。
本書は、まさに労働問題に関心をもつあらゆる人々にとって、「必読の書」であり、女性たちにとっては「待望の書」であるといってよいでしょう。本書が多くの人たちによって読まれていくことを期待します。

山川菊栄賞のページへ
http://www5f.biglobe.ne.jp/~rounou/yamakawakikue.htm

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