2014年3月22日土曜日

社会主義協会第42回全国総会開催

社会主義協会第42回全国総会が3月21日、22日両日東京新橋・交通ビル(国鉄労働組合会館)で開催されました。役員・代議員・傍聴者ら174名が参加し、会場ホール(定員180名)はほぼ満席になりました。




総会では約40名の代議員から発言があり、労働運動・職場実態、平和運動、女性運動、社民党など政党・政治運動、理論問題、社会主義協会の組織・学習運動など広範囲の内容が活発に討議されました。最後に集約に立った善明事務局長は「二年前の総会に比べて反撃が具体的になってきた。私も自信を持つことができた」と述べました。




最後に役員改選を行い、社会主義協会が分裂した1998年以来再建・指導の先頭に立ってきた小島恒久代表はじめ何人かの役員が退任し、立松潔・杉田憲道両代表(新任)、善明建一事務局長(再任)、伊藤修編集長(再任)など新役員が選出されました。退任した役員のうち小島恒久・広田貞治・加納克己各氏は顧問に選出されました。



2014年3月12日水曜日

第33回(2013年度)山川菊栄賞授賞式報告、推薦の言葉

*本年3月1日に行われた山川菊栄賞授賞式報告が、当資料室中村ひろ子理事より届きました。また推薦の言葉も届きましたので、併せて掲載します。中村理事の報告はもっと早く届いていたのですが、管理人が中国に行っていたため(中国では当ブログは読めない)、掲載が遅れました。 早々に原稿を寄せていただいた中村理事にお詫びいたします。


 第33回山川菊栄記念婦人問題研究奨励金の贈呈式が、3月1日、江の島にある神奈川県立かながわ女性センターで行われました。
  まず選考委員長の井上輝子さんから、今回は41冊が推薦され、その中から3冊に絞られ、丸山里美さんの『女性ホームレスとして生きる―貧困と排除の社会学』に決まった経過が説明されました。そして、この本が選ばれた理由を次のように話されました。
  野宿者を問題にするとき、かつては福祉の対象者として扱い、近年は主体的存在として扱うようになってきたが、丸山さんは「女性のホームレスが少ないのはなぜ?」と掘り下げていき、簡易宿泊所等に入っているのも、住み込みで働くのもホームレスと定義した。多くの対象者に接する中で、野宿か施設かを決めるのは「自立した存在」とする男性の視点では女性ホームレスが見えてこない。人は、特に女性は最初から自立した存在ではなく、他者との関係で主体形成ができる、のだと気づき、女性ホームレスの実態を描き出すことに成功した。
  こうした評価は、有賀夏紀さんの「推薦の言葉」に詳しいので参照してください。
  その後、丸山里美さんが「貧困女性の声を聞く」というテーマで記念スピーチをされましたが、その訥々とした話口は誠意が籠ったものであり、当事者の声を聞く際に、警戒心を持たせることなく、心の内を吐露させるのに力があったんだろうなと感じられました。
  大学時代、西成を訪れ、週1の炊き出しボランティアをしながら卒論をまとめた。一方的に好意を示す人がいて、恐怖から西成に行けなくなった。女性であることを痛感するとともに、救済対象者だからということで躊躇した面もあったのだが、とにかく「研究は失敗」と自分を責めた。やがて、私は行かないことで済むが、そこから逃げられない人はどうするのだろうという問題意識を持った。野宿者の3%しか女性がいないというが、なぜか、というのも疑問だった。さらに、研究者が社会病理から見て「改善する客体」と見ていたり、逆に「ホームレスだって一所懸命働いている」としたりすることにも違和感があった。「働くことが期待されていない」女性はどうしているの?女性野宿者に聞いてみたい、と再び路上生活者に接点を持ち始めた。最初の一年は、何も聞けないまま、ボランティアをした。次の一年はいろいろ聞いてみたものの、よくわからなかった。…ホームレスが生まれる社会構造、どう生きているのかの事例、なぜ女性が排除されているのか、をまとめた。アメリカのエスニック研究者が「男性は可愛そうと思われず街頭に残されるが、女性は施設に入れる。反抗的な女性だけが路上に」と分析しているが、ジェンダーを実践としてとらえないと、間違える。「女性ホームレスはこういう人たちです」というのも間違いだ。
  この後、事例にあげた女性との関わりにふれて、話はおわりましたが、研究にたどり着いた経過をこのように赤裸々に語った人を始めてみたので、びっくりしました。
 
 
 
 
  推薦の言葉   有賀夏紀
 
  丸山里美『女性ホームレスとして生きる』はユニークかつ重要な研究であり、三つの点で大きな成果を上げている。第一は女性ホームレスという、社会でも研究の上でも無視されてきた人々の実態を明らかにしていること、第二は女性ホームレスに焦点を当てることで、従来のホームレス研究の男性中心の枠組みを問い直していること、さらに第三に、これまでの研究の前提となってきた人間の「主体」の概念を覆していることである。極言すれば私たちがこれまで考えてきたような「主体」の否定は、ホームレス研究だけでなく、私たちの生き方、研究にも大きな影響を及ぼすだろう。非常にスケールの大きい研究である。
  女性ホームレスの実態は、学生時代から14年もの間ボランティアとして、また研究者としてホームレスないしその周辺の人々と共に過ごした丸山さんにしかつかみ取れなかっただろう。彼女たちの話や丸山さんの観察・経験をまとめ、一人一人の心の中にまで入り込んで描き出す記録は貴重であると同時に、感動的で読み応えのある物語になっている。
  本書はなぜ女性ホームレスが日本では少ないのだろうという問いから発し、ホームレス研究にメスを入れていく。まず「ホームレスの定義」。野宿だけでなく施設や簡易宿泊所居住、住み込みなど野宿との行き来が行われる形態も含め広義にとらえ直すことによって女性ホームレスが見えてくる。また、日本の労働市場や近代家族が女性世帯形成を難しくし、家なし女性を少なくすることを指摘する。そのとき、福祉制度の再検討も行っている。
  女性ホームレス研究の不在の重要な要因となってきた、男性中心のホームレス研究の「自立した主体」を前提とする枠組をとりあげ、この枠組が女性ホームレスを不可視化してきたと論じる。この主体性の議論が本書の核心と言えるだろう。
  ジュディス・バトラーのジェンダー論やキャロル・ギリガンの「ケアの論理」をホームレス研究に適用し、主体性に関する議論を鮮やかに展開している。野宿か否かを選択するに際して個人としての自立した主体を前提にするのでは女性ホームレスをりかいすることはできないと、丸山さんは言う。選択は主体的な個人が行うのではなく、他者との関係や次官の中で変化していくプロセスとして存在し、朱値はこのプロセスにおける実践を通して現れるというのである。このことはホームレス女性たちの生々しい事例によって検証される。
  ホームレスを客体としての人間ではなく主体としての人間としてその抵抗や自立に注目する近年のホームレス研究は一定の評価はできるものの、男性の視点からの研究であり女性ホームレスの存在を隠すか、あるいは実態の把握を阻むことになる。この視点が、また売春婦が自立したセックス・ワーカーと規定する議論につながるとも指摘する。本書における、他者との関係において形成されるとする主体、自立、選択の論理は広く他の問題にも有効に使うことができるのではないだろうか。

2014年3月1日土曜日

『社会主義』2014年3月号目次


特集 震災復興を進めるために

福地庸之■福島で地域の健康を守るということ

本多祐一朗

佐藤龍彦  他  ■座談会 震災三年を迎えて

遠藤陽子

佐々木貴■震災三年後の学校現場

高橋智■岩手県における復興の課題

阪本清■島根県における原発再稼働をめぐる闘い

 

崎山嗣幸■名護市長選から次の闘いへ

三木秀樹■「崖っぷちの社民党」公認で戦い勝利

広田貞治■混迷都民が「無難な」舛添を都知事に

善明建一■社会民主主義の「市場経済論」を考える

山崎耕一郎■『ウィリアム・モリスのマルクス主義』を読む

大槻重信■展望なき新防衛戦略

和氣文子■新刊紹介 坂口顯著『装丁雑記』 全2

加納克己■批評 安倍首相の「施政方針演説」を聞いて

伊藤修■古典を読む㉑ マルクス「賃労働と資本」二

2014年2月25日火曜日

川口武彦記念労働者運動研究奨励金贈呈式のお知らせとお願い

            川口武彦記念労働者運動研究奨励金贈呈式のお知らせとお願い
                                                          NPO労働者運動資料室
 労働者運動資料室は2002年に、故川口武彦・元九州大学教授の蔵書を基に、NPO法人として発足し、日本における労働者運動の資料収集、紹介、研究、提供等の活動をしてきました。
 2013年は、二池炭鉱三川鉱における戦後屐人の労働災害から50年の年にあたりました。1960年の三池闘争とともに、1963年のこの三川鉱炭じん爆発災害とその後の一酸化炭素中毒患者・家族をつつんだいわゆるCO闘争は、私たちに汲みつくせぬ多くの貴重な教訓を与えてくれました。私たちにとって、忘れることのできない、忘れてはならないたたかいであり、学びつづけなければならない課題です。
 この節日となる年に、三池の地に根をはり、たたかいつづける患者、家族と手をたずさえながら、CO闘争の50年を振り返り、その全貌を記録し、総括するという研究書が刊行されました。田中智子さんの著作『三池炭鉱炭じん爆発事故に見る災害福祉の視座一生活問題と社会政策に残された課題-』(ミネルヴァ非房、2012年10月刊)は、私たちにとってはもとより、日本の労働者遯動にかかわる者にとっで、ぜひとも手にとり仲聞たちと学習して、これ、からの運動に生かしてほしい、そして生命を守る連動の再生に活用してほしい研究書として、表記奨励金を贈呈することになりました。
 贈呈式は下記のとおりの日程で行われます。種々ご多忙のおりとは思いますが、私どもの趣旨をご理解、ご支援いただいて、ご出席いただきますよう、お願いいたします。
日時 2014年3月21日(金曜・祝日)午前11時半~13時
場所 ForumS(フオーラムエス)西新橋
    港区西新橋2-8-11 第7東洋海事ビル]F
 なお当日、受賞者・田中智子さんは大牟田の地から上京され、受賞記念のスピーチをしていただくことになっています。どうぞ仲問の皆様に声をかけてくださって、多くの方々の参加のもと、有意義なひと時となるようご協力のほど、よろしくお願いいたします。

2014年2月11日火曜日

小島恒久歌集『晩禱』紹介

小島恒久先生の歌集『晩禱』(現代短歌社 2014.1)が刊行されました。前歌集『原子野』(短歌新聞社 2005.11)に次ぐ第二歌集です。

小島恒久先生は九州大学名誉教授、社会主義協会代表です。専門は経済学で、『経済学入門』(労大新書)などこの方面での多くの著書があります。向坂逸郎直系の弟子で、研究上も社会実践上も、向坂逸郎の志を直接受け継いでいます。

小島先生は同時に写実を重視するアララギ派の歌人でもあり、過去にも朝日新聞「折々の歌」に取りあげられたことがありました。

題名の『晩禱』は、「みずからも晩年にある私の、先立った人びとに捧げるささやかなレクイエム(鎮魂歌)という思い」と先生はあとがきで述べています。

『晩禱』には、高野長英、渡辺崋山、徳富蘆花、長塚節ら歴史的人物から向坂逸郎、大内兵衛、さらにすでに故人となった多くの同世代の友人までの先人を偲ぶ歌、長崎での被爆体験の思いを詠んだ歌、社会問題、国際問題にアプローチした歌など、さまざまな短歌が計六〇三首収録されています。その全貌を紹介するのは容易なことではありませんが、以下私の独断で二〇首選んでみました。小島先生の短歌の世界をさらに味わいたい方は、ぜひ『晩禱』を書店で注文し直接ご覧ください。

『晩禱』書誌情報 ISBN978-4-86534-001-3 定価2500円(本体2381円+税)2014年1月20日発行 現代短歌社(電話03-5804-7100) 

(歌の配列順は『晩禱』掲載順、かっこ内は原文ではルビ)

被爆死の友らは永久に若くして傘寿の宴の壇上に笑む
受けよとの勧めはあれど師を思ひ同志ら思へば叙勲辞すべき
時流に乗る器用さなければ一つ思想愚かに守り来ぬ悔やまず今は
ソ連の解体見ずに逝かしし先生を死に上手と言ふ背きし弟子が
世に抗し師説を守るわれら少数大方は利に付きて離(さか)りぬ
戦死者の六割がああ餓死と言ふ太平洋戦争の英霊あはれ
アンネあらばいかに嘆かむ祖国の兵が罪なきガザの子かく危むるを
教ふるとは恥しのぶこと己が無知に幾度ほぞかみ壇を下りしか
過労死増え働く貧困層(ワーキング・プア)増えゆくにデモもストもせぬ労組歯がゆし
慰霊祭も市と患者とで別にもつ水俣に残る亀裂は深く
慰安婦にも集団自決にも「軍の関与」を消して歴史をまた歪めゆく
かの夏浴びし放射能がわが身内にひそみ癌となり出づ六十年経て
日露戦の勝利に狂喜し驕る日本を「亡国の初め」と蘆花は断じき
俺も征くと特攻檄せし司令官は征かず永らへ卒寿まで生きぬ
書を捨てよ革命近しと吾に迫りし全共闘の彼のその後を聞かず
コストを惜しみ想定低く見積もりゐて「想定外」と責任回避す
断れば職失ふゆゑ派遣社員は現場に働く被曝ををかして
人住めぬ廃墟となりしチェルノブイリの轍踏みゆくかわがフクシマも
明日の危険よりも今日の利を欲り原発の再稼働のぞむ過疎の地元が
若く被爆し原爆症病むわが終のつとめと叫ぶ「脱原発」を

2014年2月4日火曜日

労農派の歴史研究会第156回例会報告

本文の中に、「企業内にあるのは共同決定法にもとづく従業員評議会であって、日本のような労組の「下部組織」は存在しないということは、昔、聞いたことがあるような気がするが、改めて日本との違いについて、驚かされた。 ドイツでは、労組が企業の外にあり、その労組の組合員が企業と契約を結んで働く、という仕組みになっている。企業に所属する労働者が結びついて労働組合をつくるというのではない。だからドイツの労組では、企業と労働組合幹部が癒着するという事態にはなりにくい。双方とも、結ばれた契約にもとづいて行動するのである。癒着もないが、労使交渉が妥結した後で職場闘争でより有利な条件を認めさせるというような行為もしない。労働条件を変えるには、改めて交渉をし直すしかない。そういう歴史をふまえた、労働組合運動なのである。

 日本の労働運動が活発であった頃には、日本の運動ほうがよく見えた。労使交渉が終って協約が結ばれても、職場闘争の成果として、それ以上の労働条件を獲得することが、たいへん立派な階級闘争だと思われた。しかし、現在の日本では、労使交渉で何か決めても、職場では、サービス残業が横行している、つまり労使交渉で決めたことが守られていない職場が多い。有給休暇は、西欧では100%使うことが当たり前だが、日本では活動家でも100%はなかなか使わない。執筆者の村田さんは、日本の労働組合運動も体験しているので、この違いが良く判っていて、書いたのだと思われる。

 労働組合運動の成立、その後の発展の経過が違うので、組織のあり方についてどちらが良いかは、簡単には言えない。どちらかが良いと思っても、簡単に選択、変更できるわけではない。しかし、ドイツをはじめとする西欧の労資関係において、双方が交渉の結果を大事にしている(もちろん、交渉の結果を守らなければペナルティーが大きい)ということは、日本の労働運動ももっと学んで良いのではないだろうか。

2014年2月1日土曜日

『社会主義』2014年2月号目次

『社会主義』2月号の目次です。注文は社会主義協会へ。一冊600円。紀伊國屋書店本店でも販売しています。
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横田昌三■第一八六回通常国会の焦点と私たちの課題

仲田信雄■大企業にばらまく2014年度予算

 

特集 2014春闘をいかに闘うか

近江守■連合2014春闘方針と課題を考える

足立康次■2014年春闘・各産別の方針を読む

善明建一■派遣労働の常態化に断固反対しよう

原田和明■鉄鋼合理化と2014年春闘

伊藤功■2014春闘、自治労の重点課題

橋本勇■公的部門労働者の実態と課題

 

北川鑑一■特定秘密保護法を検証する

本村隆幸■安倍自民党の「憲法・教育破壊攻撃」

津田公男■新「防衛計画の大綱」がめざすもの

瀬戸宏■中国共産党一八期中全会と現在の中国

伊藤修■古典を読む㉑ マルクス『賃労働と資本』一成り立ち