2013年2月13日水曜日

2012年度山川菊栄賞授賞式報告

*資料室理事の中村ひろ子さんから授賞式報告が届きましたので、掲載します。

今年の授賞式は、偶然も重なり、日本の植民地支配の歴史を反省させられるエピソードに満ちたものでした。まず、会場の韓国YMCAは、95年前、朝鮮人留学生たちが3・1独立宣言起草し発表をしたところでした(会館内には歴史資料室あり)。またホールでは「建国記念日」反対集会が開かれ、終了後デモ行進があるというので、「右翼がくる」という名目で、機動隊に囲まれての開催でした。そして授賞作が対象にしたのは、植民地被害そのもの、在日1世、2世のオモニたちの識字運動、夜間中学の増設運動だったのです。

 徐阿貴(そ・あき)さんは、ご本の内容がもつ重さからは想像できない華奢な方でした。その印象のごとく、優しい語り口で、ときには笑いを誘いながら、なぜこういう研究をするに至ったかを話されました。しかし、オモニたちが教育委員会と交渉している場面(受賞を喜ぶオモニたちだが皆高齢なので東京には来られず、何かないかと探したところ1週間前にようやく見つけ出した記録のDVD)を見せられた頃から、会場はすすり泣きが途絶えることはありませんでした。
 

 徐さんは、在日3世ですが、祖母や母親の生き方から示唆をうけて、このテーマに取り組まれたとのことです(だから、著書はお三方に捧げられている)。男たちは移住を強いられても、仕事を通じて移住先に根付くものだが、女たちは私的領域にとどまるため(専業主婦)二重差別のなかで生き続けざるをえない。そういう認識だったところに、東大阪の夜間中学に学ぶオモニたちが、母や妻としてではなく、自らの学ぶ権利獲得、自治体に学びの場を保障させ、地域で人としての主体確立に動いたことを知ったのでした。それから徐さんは、夜間中学を訪問され続け、オモニたちの活動を追い続け、博士論文としてまとめあげられたのです。それをもとに本に仕上げられたのでした。時にはお子さんを連れて一ヵ月近く滞在しての取材であったとは、当時の中学校の先生からお祝いの言葉の中にありました。なお、徐さんの受賞スピーチの全文は、夏ごろの『社会主義』に掲載の予定です。
 
 

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